注目の「データサイエンス」を高校生に 出前授業で裾野広げる企業
毎日新聞2024/12/11 17:30(最終更新 12/11 17:30)1257文字
アクセンチュアの社員からデータ分析について教わる高校生=福岡市早良区の西南学院高校で2024年7月23日午後3時54分、久野洋撮影
データを分析して業務の効率化や経営戦略に生かす「データサイエンス」を高校生に教える企業が増えている。業務のデジタル化が急速に進み、そこから得られるデータの活用が企業の業績を左右するまでになっているためだ。専門人材の需要が増す中、企業は出前授業を通して人材の裾野を広げたい考えだ。
「どうすれば売り上げを伸ばせるか、データと照らし合わせてみてください」。福岡市の西南学院高で今年7月、総合コンサルティング会社「アクセンチュア」の社員が高校生約30人に問いかけた。
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アクセンチュアの社員から、データの分析方法について教わる高校生=福岡市早良区の西南学院高校で2024年7月23日午後2時59分、久野洋撮影
出された課題は、架空の遊園地の経営上の課題を探り、増収策を考えることだ。時間帯ごとの客数や収入、客層、フード販売などのデータから課題を読み解き、効果的な集客策を導く必要がある。
データの性質に応じて折れ線や棒などのグラフを活用し、情報を整理することで、「客の中で学生の数が多い。減少幅も大きいのでテコ入れが必要だ」「午後3~5時の入園者が少ない」といった課題が浮かんだ。生徒らは「軽食の販売を強化しよう」「SNS映えするお菓子を開発し、女性・学生客を狙う」と戦略を考えていた。
データをビジネスに生かす取り組みは昔から一般的だったが、業務のデジタル化で状況が変わった。従来は紙に記入されていた情報がデジタル化でデータとして蓄積され、人工知能などで分析しやすくなっている。膨大な情報を統計学などの手法で分析する「データサイエンス」が企業などで注目されている。
例えば工場のプラントでは、センサーの数値をデジタル化すると、温度や振動などのデータが集まり、これらを分析することで点検や部品交換の最適なタイミングが分かり、整備のコストを減らせるようになった。
コンサルティング業界やIT関連企業などは、膨大なデータを分析する「データサイエンティスト」を抱え顧客企業を支援している。コンサル業界のみならず、多くの業界でデータを扱える人材を育成しようとしている。
アクセンチュアのデータサイエンティスト、コーネット可奈さんは「商談メモなどの書類もデジタル化が進み、人の経験則だけでなくデータに基づいた戦略の立案ができるようになる。統計学を駆使するデータの専門職だけでなく、文系・理系問わず多くの職業でデータ分析の能力は重視される」と話す。
教育界でもデータサイエンスは注目されており、大学では専門学部が開設され、高校でもデータサイエンスを扱う授業が増えている。実践的な授業を企業に期待する高校も多く、アクセンチュアはこうした高校向けの出前授業に2023年から取り組み全国約20校を訪問した。約1100人のデータサイエンス関連の社員がいる日立システムズも20年度から関東地方などで出前授業を手がけ、5校に社員を派遣してきた。
日立システムズの担当者は「実際のビジネスに即した授業を求める高校は多く、問い合わせも年々増加している。人口減少が進む日本の産業界ではデータ活用による業務の効率化が不可欠だ。データサイエンスを支える人材の育成に役立ちたい」と話す。【久野洋】
https://mainichi.jp/articles/20241211/k00/00m/020/161000c