トランプ氏 次期政権人事 骨格を近い人物で固める
2024年11月13日 16時21分
アメリカ大統領選挙で勝利した共和党のトランプ氏は、国境管理などを担当する国土安全保障長官に、自身を強く支持してきたサウスダコタ州知事を起用すると発表しました。トランプ氏は、政権の骨格を自身に近い人物で固める姿勢を鮮明にしています。
日本時間の13日に入ってきた最新の動きをまとめました。
目次
イーロン・マスク氏ら 政府の支出削減の検討組織トップに
国防長官にFOXニュース司会者ヘグセス氏
国土安全保障長官にノーム州知事
トランプ氏は12日、声明を出し、来年1月の政権発足に向けて、国土安全保障長官にサウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事を起用すると発表しました。
ノーム知事はトランプ氏を強く支持してきたことで知られ、今回の大統領選挙では激戦州の集会に参加するなどして支援してきました。
国土安全保障省は国境管理などを担うため、ノーム知事は、トランプ氏が選挙期間中に訴えてきた国境管理の強化や、移民対策にあたることになります。
トランプ氏は声明で、近年、法的な手続きをせずにメキシコとの国境を越えて入国を試みる人が急増した問題で、ノーム知事が南部テキサス州の支援のため州兵を派遣した最初の知事だったとして「ノーム知事は国境の安全に強く取り組んできた」としています。
トランプ氏はこれまでに政権の要となる大統領首席補佐官に、みずからの陣営で選挙対策本部長を務めたワイルズ氏を、また国連大使に自身を強く支持するステファニク下院議員を起用する人事などを発表していて、政権の骨格を近い人物で固める姿勢を鮮明にしています。
トランプ氏の前の政権では閣僚や側近が更迭や辞任で相次いで交代していて、アメリカメディアは新たな政権の人選について、「忠誠心が共通した要素になっている」と伝えています。
イーロン・マスク氏ら 政府の支出削減の検討組織トップに
トランプ氏は、政府の支出を見直し、削減を検討するための政府の組織のトップに、実業家のイーロン・マスク氏と起業家のビベック・ラマスワミ氏の2人を起用すると発表しました。
このうち、マスク氏は、EV=電気自動車や宇宙ロケット、旧ツイッターのXなどさまざまな事業を手がける実業家で、大統領選挙ではトランプ氏を支持しました。
また、ラマスワミ氏はバイオテクノロジー企業を設立するなどして富を築き、共和党から大統領選挙への挑戦を表明し、撤退表明後はトランプ氏を支持してきました。
トランプ氏は声明で「2人が連邦政府の官僚機構を変革し、すべてのアメリカ人の生活をよりよいものにすることを期待している。重要なのは、政府の支出の膨大なむだと不正を排除することだ」と述べました。
また、マスク氏は声明で「システム全体や政府のむだづかいに関与している多くの人たちに衝撃を与えるだろう」としています。
今回の2人の起用の背景には、民間の視点から行政のむだを大幅に削減することを通じて、財政の健全化を目指す姿勢を示すねらいもあるものとみられます。
イーロン・マスク氏とは
イーロン・マスク氏はさまざまな事業を手がける実業家で、当時、経営していたインターネット企業を売却した資金で、EVメーカーのテスラを立ち上げて世界トップのメーカーに成長させ、自動車業界のEVシフトを先導しました。
さらに宇宙ロケット事業では、何度も打ち上げ失敗を経験しながらも民間企業が独自開発したロケットを初めて地球の周回軌道に到達させる偉業を達成しました。
また、おととし10月にはアメリカのソーシャルメディア大手、ツイッターを440億ドルで買収し、その後ブランド名を「X」に変更しました。
ことし7月以降、マスク氏はSNSでトランプ氏を支持する投稿を繰り返していて、ことし9月にはトランプ氏が「連邦政府の財務や業務監査を行い、抜本的な改革を提言することを任務とする『政府効率化委員会』を創設する」と述べ、そのトップにマスク氏を起用する考えを示していました。
マスク氏はトランプ氏が東部ペンシルベニア州で開いた集会でも応援演説を行ったほか、みずからが行う署名に応じた有権者を対象に投票日まで毎日1人ずつ抽選で100万ドル、日本円にしておよそ1億5千万円を配り、物議を醸しました。
ビベック・ラマスワミ氏とは
ビベック・ラマスワミ氏は中西部オハイオ州出身で、両親がインドからの移民のインド系アメリカ人です。
薬品の開発に携わるバイオテクノロジー企業などを設立して起業家として成功し、富を築きました。
今回の大統領選挙では共和党から立候補を表明し、政治経験はないものの党内の支持率で一時、3番手に浮上するなど注目されました。
ラマスワミ氏は、今のアメリカの官僚制度は国民に奉仕するという本来の目的を失ったと指摘し、連邦政府職員の75%を解雇することやFBI=連邦捜査局や教育省の廃止を訴えていました。
また、トランプ氏が掲げる「アメリカ第一主義」を支持し、選挙戦からの撤退後はトランプ氏の選挙活動に加わり、集会で支持を呼びかけてきました。
国防長官にFOXニュース司会者ヘグセス氏
トランプ氏は12日、次期政権の国防長官に元軍人で保守系のテレビ局FOXニュースで司会者を務めてきた、ピート・ヘグセス氏を起用すると発表しました。
ヘグセス氏は大学卒業後、陸軍州兵としてイラクやアフガニスタンに派遣されたことがある元軍人で、FOXニュースの番組で司会者を8年間務めてきたということです。
トランプ氏は声明の中で「彼ほど部隊のために献身的に戦うものはおらず、われわれが掲げる『力による平和』の政策を推し進める愛国者となるだろう」としています。
ヘグセス氏の起用は有力紙ニューヨーク・タイムズが「この人選は、伝統的な国防長官の基準から逸脱したものだ」と伝えるなど、驚きを持って受け止められています。
アメリカのメディアによると、ヘグセス氏はトランプ氏の「アメリカ第一主義」のもと、海外からのアメリカ軍の撤退を支持し、バイデン政権の安全保障政策を批判してきたということです。
ピート・ヘグセス氏とは
ニューヨーク・タイムズは、ヘグセス氏の起用について「テレビ局の盟友を国防総省と130万人の現役部隊を指揮する立場へと引き上げた」と驚きを持って伝えました。
FOXニュースによりますと、ピート・ヘグセス氏はプリンストン大学を卒業。ハーバード大学のビジネススクールで修士号も取得しています。
大学卒業後に陸軍州兵の歩兵部隊に入隊し、アフガニスタンやイラク、キューバにあるアメリカ軍のグアンタナモ基地に派遣された経験があるということです。
FOXニュースには2014年に加わり、番組の司会やニュースの解説を行ってきたほか、トランプ政権下の新年の番組では、当時のトランプ大統領に単独インタビューを行いました。
ニューヨーク・タイムズによりますと、ヘグセス氏は1期目のトランプ政権の期間中、トランプ氏を熱心に支持し、トランプ氏と北朝鮮のキム・ジョンウン総書記とのやりとりを擁護したほか、戦争犯罪で告発された退役軍人の置かれた立場を精力的に伝えたということです。
CIA長官にラトクリフ氏
トランプ氏は、CIA=中央情報局の長官に、前のトランプ政権で情報機関を統括する国家情報長官を務めた、ジョン・ラトクリフ氏を起用すると発表しました。
トランプ氏は、選挙から1週間のうちに主要な閣僚や補佐官などの人事を発表していて、来年1月の政権発足に向けた準備を加速させています。
ジョン・ラトクリフ氏とは
ジョン・ラトクリフ氏は弁護士や検察官、南部テキサス州のヒース市長を8年間務めた後、2015年から2020年まで共和党の下院議員を務めました。
下院議員時代に、いわゆるロシア疑惑をめぐりトランプ氏を支持する立場を示し、トランプ氏から信頼を得たとみられています。
その後、2020年からは1期目のトランプ政権で情報機関を統括する国家情報長官を務めました。
当時、民主党側からはラトクリフ氏がトランプ氏や共和党側に有利になるよう、機密情報を公開したという批判もあがりました。
現在はトランプ氏の側近らが集まる保守系シンクタンクAFPI=アメリカ第一政策研究所で、安全保障についての共同責任者を務めていて、選挙期間中もトランプ氏に安全保障政策について助言していたとみられます。
安保補佐官にウォルツ氏
トランプ氏は12日、声明を出し、ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議を束ねる大統領補佐官に、マイク・ウォルツ下院議員を起用すると発表しました。
ウォルツ氏は陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」の一員として中東やアフガニスタンなどに派遣されたことがある元軍人で、対中強硬派として知られ、ウクライナへの軍事支援の継続には否定的な立場を表明しています。
トランプ氏はウォルツ氏について「私のアメリカ第一主義の外交政策の強力な支持者となってきたし、『力による平和』を追求する偉大な支持者となり続けるだろう」として、自身が掲げてきた外交、安全保障政策を推し進めることができる人物だという考えを示しました。
また、トランプ氏は同じく12日、イスラエル大使に教会の牧師の経験があり、保守派として知られるマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事を起用すると発表しました。
トランプ氏は声明でハッカビー氏について「中東に平和をもたらすために、精力的に働くだろう」と期待を示しました。
トランプ政権 1期目の閣僚らとは確執も
トランプ政権の1期目では、政治経験がないトランプ氏を支えるために、重要ポストには側近だけでなく軍出身者も就き、安全保障政策などについて意見をぶつける場面もみられました。
1期目で国防長官に就任したマティス氏はアメリカ海兵隊の元大将で、イラク戦争などで前線の部隊を率いた歴戦の雄として知られました。党派を超えて多くの政治家からも信頼を集め、安全保障分野でトランプ氏に一定の影響力があったとされています。
また、海兵隊の元大将で、政権発足時に国土安全保障長官を務めていたケリー氏は「混乱する政権内に規律を取り戻すため」として、2017年7月に政権の要となる大統領首席補佐官に起用されました。
ただ、いずれもトランプ氏との意見の食い違いや確執が伝えられたあと辞任し、政権を離れました。
こうした中、2期目ではトランプ氏は重要ポストにみずからに近い人物を起用する姿勢を示していて、アメリカのメディアは「トランプ氏は2期目では忠誠心を優先していることがうかがえる」と伝えています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241113/k10014636631000.html