富士山 夏山シーズン終わる 混雑防止や弾丸登山対策で変化は
2024年9月10日 19時53分 観光
通行料の徴収やゲートの設置など、山梨県側で新たな規制が導入された富士山のことしの夏山シーズンは10日、最終日を迎えました。
夜通しで山頂を目指す、いわゆる「弾丸登山」対策も行われましたが、登山者数などに変化はあったのでしょうか。
山梨県側ではことしから登山規制
富士山の夏山シーズンは10日が最終日となり、山梨県側では午後4時になると県の担当者の宣言でゲートが閉じられました。
山梨県側ではことし初めて5合目にゲートが設置され、1人2000円の通行料を徴収したうえで、混雑防止のため一日当たりの登山者を4000人までとし、いわゆる「弾丸登山」対策として午後4時から翌日の午前3時まではゲートを閉鎖する規制を導入しました。
外国人登山者への注意喚起も
山梨県によりますと、7月上旬ごろには閉鎖直前に登山口のゲートを通って夜通しで登り、山小屋の外のベンチで仮眠を取ったり、寝袋で休んだりして、山頂でのご来光を目指す外国人登山者の姿が見られました。
このため在日大使館を訪問したり、外国人向けの旅行会社に対して現地のことばで「山小屋での宿泊を伴わない夜間登山は、大変危険なので絶対にやめてください」といった注意喚起をしました。
山小屋の外で寝る登山者
その結果、7月下旬以降は、弾丸登山を行う外国人の姿はほとんどみられなくなったということです。
ことしの夏山シーズンに5合目のゲートの通過が許可された人はあわせて14万1400人。一日当たりで最も多かったのは今月7日の3382人で、シーズン中に一日の上限4000人に達した日はなかったということです。
登山者数 去年に比べて14%減
環境省は富士山にある4つの登山道の8合目付近に赤外線カウンターを設置し、登山者の数を調べています。
それによりますと、7月の山開きから今月4日までに富士山に登った人数の速報値は17万8085人で、去年の同じ時期に比べて2万9605人、率にして14%減りました。
このうち山梨県側の登山道から登ったのは10万3282人、静岡県側の3つの登山ルートからは7万4803人で、いずれも去年の同じ時期を下回りました。
富士山の夏山シーズンの登山者数は、コロナ禍で激減するまで20万人を超えて推移し、新型コロナが5類に移行した去年は4年ぶりに20万人を上回っていました。
環境省は今シーズンから新たに山梨県側で登山者数や時間の規制が、静岡県側では登山者の事前登録システムが始まったことなどが影響したと考えられるとしています。
山梨県側の山小屋オーナー「『弾丸登山』が大きく減った」
山梨県側の登山道、吉田ルートの5合目にある山小屋「富士山みはらし」オーナーの井出雄貴さんは、規制が始まってから「弾丸登山」が大きく減ったとしています。
井出さんは「去年までは弾丸登山が非常に多く、具合が悪くなった宿泊客以外の人たちの対応に追われて大変でした。別の山小屋の方からは、『登山道にシートを敷いて寝ている』とか『山頂でたき火をしている人がいる』といった話も聞きました。ことしは規制を設けたことで弾丸登山をする人が減り、状況が非常に良くなったと感じています」と話していました。
富士山では夏場でも気温が氷点下まで下がることがありますが、軽装で登ってくる人も見られるということで「登山に対してしっかり準備する人も増えたと実感していますが、これからも軽装だと危ないということは、しっかりと周知していかなければと思います。今回が初めての登山規制でしたが、よりよい仕組みになるよう県と協議していきたいです」と話していました。
一方、規制のない静岡県側では...
静岡県側の登山道、富士宮ルートの9合目にある万年雪山荘の渡辺和将社長は「ことしから山梨側で入山規制を取り入れて、シーズン前から報道などで周知されたことで、夜に登山に来る人はだいぶ抑えられたと思う」と話しています。
一方、「弾丸登山」を行う人の姿も見られたということで「お盆の時期などに外国人の登山者の団体が登ってきて、小屋の前で寝袋にくるまって休んでいる人たちもいた」と話していました。
その上で「気温が低く、急な天候の変化や低体温症のリスクもある中、装備が甘いと思われる人も登ってきていた。そういう人をゼロにできるよう、来年の山開きに向けて、静岡側でも強制力のある規制を設けることも検討をしていく必要があると思う」と話していました。
静岡県も来夏は規制へ
静岡県側では登山道のゲート閉鎖などの規制は設けられていませんが、山小屋での宿泊の有無などを事前に登録するよう求めるシステムの運用を始めています。
鈴木知事は10日の会見で「夜間の登山者が減るといった一定の効果があった一方で、死亡事故が増加した」と今シーズンを振り返りました。
その上で、いまも弾丸登山が散見されることから、山梨側と足並みをそろえ、来年のシーズンから通行料の徴収のほか、通行時間の規制などを導入したいという考えを示しました。
今月下旬から現地調査を行うとともに、国や地元自治体と協議を進め、来年2月の県議会をめどに必要な条例を制定したいとしています。
鈴木知事は「山梨県側の抑制効果も鑑みて、危ない登山が減るように規制を行っていきたい」と述べました。
登山者たちの受け止めはさまざま
東京から訪れた70代の女性は「弾丸登山を経験したことがあるが危険なのでやめたほうがいい。安全のために規制することはいいことだ」と話していました。
また、千葉から訪れた22歳の大学生の男性は「富士山を管理するためには通行料2000円というのは妥当だと思う」と話していました。
一方で、東京から訪れた20代の会社員の男性は「去年まで無料だった入山に2000円かかるというのは少し高いと思う。登りにくくなってしまう人もいるのではないか」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240910/k10014577731000.html