「アマゾン」配達中にけが ドライバー労災認定 全国初か
ネット通販大手「アマゾン」の配達を行うフリーランスのドライバーが配達中にけがをしたことについて、労働基準監督署から労災として認定されたことがわかりました。支援する弁護士は、アマゾンの配達員が労災認定されたのは全国で初めてではないかとしています。
男性は支援をする弁護士や労働組合とともに4日、都内で記者会見を開きました。
それによりますと、60代のドライバーは神奈川県内でネット通販大手「アマゾン」から荷物の配送を委託された会社と契約を結び、フリーランスとして荷物の配達を行っています。
しかし、去年9月、配達中に階段で足を滑らし2メートルほど下の地面に転落して腰の骨を折るなどのけがを負い、2か月間の自宅療養を余儀なくされました。
注目
労災と認定 50日分の休業補償給付へ
これについて男性は労働基準監督署に労災の申請を行っていましたが、先月26日に労災が認定され、労災保険から50日分の休業補償が給付されることになったということです。
労働基準監督署から認定理由の説明はありませんが、弁護士は、アマゾンのアプリで配達の数やルートが割り当てられ、事実上、業務を断ることができないことなどが指揮・監督を受けていると認められたとしています。
弁護士などは、アマゾンの配達員が配達中の事故で労災認定されたのは全国で初めてではないかとしています。
男性は「配達中に事故をしても泣き寝入りしている人がいっぱいいます。周りの配達員たちも今回の決定で働き方や仕事の是正が進めばいいと喜んでいます」と話していました。
弁護士「配達員の労働者性を肯定した画期的な労災認定」
アマゾン労働者弁護団の菅俊治弁護士は「今回の決定はアマゾンの配達員の労働者性を肯定した画期的な労災認定だ。今後は全国の配達員が配達中の事故による療養や休業に対して保険給付されることになると予測され、多くの配達員が救済されることになる」と話していました。
配達員と契約の会社「現時点では回答差し控えたい」
アマゾンから配達の委託を受けて配達員と契約を結ぶ会社は、NHKの取材に対して「現時点では個別具体的な回答を差し控えたい」とコメントしています。
フリーランスの労災保険 対象業種拡大に向け議論
フリーランスで働く人が業務でけがをした時に補償を受けることができる労災保険の特別加入制度について、厚生労働省は、利用できるのが一部の業種に限られていることから対象業種の拡大に向けて議論を始めました。
厚生労働省によりますと、フリーランスは国内で462万人いるとされていますが、企業などに雇用されている労働者ではないため原則として業務でけがをした時などに労災保険による補償を受けられません。
ただ、フリーランス保護のため、自転車で料理などを届ける配達員やシステムエンジニアといった一部の業種は、自ら保険料を支払えば補償を受けられる特別加入制度が設けられています。
2021年度末時点でこの制度に加入しているフリーランスは75万人余りいますが、対象が一部の業種に限られているため、厚生労働省は対象業種の拡大に向けて4日から審議会で議論を始めました。
委員からは、幅広い業種で業務中の災害の把握や安全教育を十分に行える制度にするべきだという意見や、対象の拡大に向けて制度の説明窓口を各地に設置すべきだといった意見が出されていました。
フリーランスをめぐっては、ことし4月に就業環境の整備を図る法律が成立し、付帯決議で希望するすべてのフリーランスが入れるよう制度の対象を拡大するとしていて、厚生労働省は来年秋の施行までに審議会の意見をまとめ、必要な省令改正を行うことにしています。
官房長官「必要な措置講じていく」
松野官房長官は午後の記者会見で「さきの通常国会で成立したいわゆるフリーランス法の付帯決議で、希望するすべての特定受託事業者が加入できるように取り組むとされた。厚生労働省の審議会で早期に結論を得て必要な措置を講じていく考えだ」と述べました。
リンク;https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231004/k10014215281000.html