男と女…同じことについて話しているのに
反応が異なるワケ
【科学が証明!ストレス解消法】
【科学が証明!ストレス解消法】#111
男性と女性では、同じことについて話しているにもかかわらず、まったく異なる反応を示すことが珍しくありません。
たとえば、「最近行ったおいしかったお店」の話をすると仮定しましょう。この話題を女性2人が話すと、「そうそう! あそこおいしいよね。分かる~」という具合に共感し合うケースが多いと思います。 これが男性2人になると、「たしかに。でも、あっちのほうがうまい。だって……」と競い合うような会話に発展していく──。
このように、同じテーマなのに男性と女性では反応が異なるから不思議です。 一般的に、女性の方が共感し合う脳機能が発達しているといわれているのですが、米ハーバード大学の研究(2014年)によると、「男性は自分と異なる能力の人と、女性は自分に似た能力の人と交流する」というデータが明らかになっています。 実験では全米の大学教授を一堂に会して交流会の場を設けてみたそうです。すると、男性教授は年齢も立場もまったく異なるグループを形成し、女性は年齢や同じ専門分野のグループと話す機会が多かったといいます。
もちろん、大学教授同士の実験ですから一概には言えません。また、スクールカーストではないですが、学生時代は男女ともに似たような環境の同性同士でつるむことも多いでしょう。 そのため“男性的”“女性的”という感覚や態度は実は社会的な環境や因果によるところが大きいともいわれています。つまり、後天的な影響によるものが大きいのではないか、と指摘されています。 男女における脳の働きは違うといわれている一方で、脳の構造的には変わらないという研究もたくさんあります。16年には、米ロザリンド・フランクリン大学が男女6000人の脳のMRI画像を分析し、「性差は明らかにならなかった」と結論付けているほどです。 脳の性差は未解明ではあるものの、男性はグループを好み、女性は1対1を好む──という興味深いデータもあります。 たとえば、少年漫画ではグループ的な構図が多いのに対して、少女漫画は親友の〇〇ちゃんとの関係性がフィーチャーされる。あるいは、男性は不良系マンガやアイドルユニットのようにグループを好む一方で、女性はBLに代表される誰かと誰かの構図に引かれるというのは、そうしたデータを裏付ける傾向かもしれません。
ところが、脳の働きは同じなわけですから、男女の差異というのは本当に不思議なものです。前述したように社会的な影響も大きいと考えられているわけで、どんな環境で育つかといったこととも無関係ではありません。
耳が聞こえない人は声変わりがないともいわれてますから、人間というのは環境や状況によって変わっていく生き物。これまでにも生物の歴史は、必要がないと判断すれば、必要のない進化や変化は遂げなかったわけですから。 人間も生物の一種です。将来、自分がどのような考え方や交流を持つかは“今”の自分が決めているということをお忘れなく。
(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)
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