私が「朝食抜きダイエット」をおすすめしない理由/中川真依
スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋。最近では、寒さとともに秋の深まりを感じるようになってきたが、皆さんにとってはどんな秋だろうか。
私は「スポーツの秋!」と言いたいところだが、秋には大好きな食べ物がたくさんある。巨峰やシャインマスカット、柿や梨やみかんなどのフルーツは、冷蔵庫にどれか2種類は必ず入っている。栗やサンマ、かぼちゃやキノコなど、旬の野菜もとても魅力的だ。 今回は「食欲の秋」にちなんで、朝食の大切さを伝えたい。 皆さんは毎日の習慣として、朝食を取っているだろうか。私は、現役を引退した今でも、必ず朝食を取るよう心掛けている。現役中は、朝から練習する体力をつけるため、エネルギーとなる炭水化物と一緒に、筋肉強化に欠かせないタンパク質を取るようにしていた。特に飛び込み競技は一瞬の気の緩みがケガにつながるため、空腹で集中力が欠ける状態は避けたかったという理由もある。
しかし、高校生から大学生の頃にかけては、何をやっても体重が減らず、ダイエットのために朝食を抜くこともあった。学校で友達と過ごす昼間と、練習後のおなかのすいた夜の食欲を抑えると、精神的ストレスが大きかった。そのため、朝食を抜くことが一番手っ取り早かったのだ。 しかし、朝食を抜くことによって、さまざまな弊害がうまれた。
1)集中力の低下
午前中はエネルギーが足りずやる気が起きない。授業も聞いてはいるものの、空腹のためちゃんと頭に入ってこない。
(2)昼食の量が増加
朝を抜いているという安心感から適量以上に欲しくなり、つい爆食いしてしまう。
(3)午後の眠気
昼食時に急激に血糖値が上がり、その後、眠気との戦いが始まる。さらに集中力は低下していく。
授業が終わると練習へ向かうが、練習後にも、もちろんおなかがすく。疲労回復や、損傷した筋肉のためにもタンパク質を中心とした食事を食べるようにしていたが、やはり量が増える。その罪悪感からまた朝食を抜いて調整する。という具合に悪循環に陥り、なかなか抜け出せない時期が続いた。 きちんとした知識もないまま自己流での食事法に限界を感じ、栄養士と共に食事の見直しを図った。そこで最初に言われたのが「必ず朝食を食べること」だった。
朝食を食べる利点として、熱を作り出し基礎代謝を上げることによって太りにくくなる。さらに腸が活発になることで排便を促し、腸内環境を整えてくれる効果も期待できる。そして何より、朝からエネルギー補給をすれば、体も動くし、頭もきちんとした判断が出来るようになる。 私がアメリカへ練習に行っていた時には、クラブチームのコーチが「朝食では、卵やベーコンなどのタンパク質をとりなさい」という指導を行っていた。小学生の選手たちもその意味を理解しているようで、きちんと実践していた。こういった指導をジュニアの頃からしているのとしていないのとでは、のちのち必ず差が出るだろう。
最近読んだ新聞記事では、タンパク質は夕食よりも朝食で摂取した方が、筋肉の維持や増加が期待出来るという研究結果もあると書いてあった。前日の夕食からの絶食状態が長いため、朝食で食べた栄養が吸収されやすく筋肉になりやすいのだそうだ。 説明もせずただ「痩せろ」といわれたり、「お菓子を食べてはダメ」では、むしろその欲求を満たしたい気持ちが出てきてしまう。私も、もっと早い段階で食事の意味を理解できるような指導を受けておけば、そこまで困ることはなかったのかと考えてしまう。 しかし、その経験があるからこそ、未来ある選手たちにはもちろん、娘にも朝食を食べる習慣をつけさせたいと思っている。そして、理解が出来る年齢になった時には、その理由もきちんと伝えていきたいと思う。
リンク:https://news.yahoo.co.jp/articles/70cb103a5d7087524eddadb0e8ea764695e76ef6
[単語]
1. 巨峰(きょほう): 日本原産の生食用ブドウ品種の一つ
2. 爆食い(ばくぐい): けた外れの大食い。
3. 陥る(おちいる):よくない状況になること。