若い人ほど早くリタイアしたい 日本人の退職準備は楽観的か
老後2000万円問題が話題になってから1年。当時は「2000万円なんて無理だ」「平均値は高くても、ほとんどの人は達していない」などの声が挙がるも、老後を年金だけに頼ることはできないという意識が高まった。では、日本人はそこからしっかり老後を見据えて準備をするようになったのだろうか?
勤労者を対象にした退職準備に関するアンケートによると、日本人の多くが、まだまだ退職後に必要な資金を楽観的に捉えていることが分かった。退職・投資教育研究所の野尻哲史氏は、こう警鐘を鳴らす。
「かなり甘く見ている。日本人は楽観的だと強く出た。計画通りにいっていると思っている人のうち、実際に計画通りにいっている人は45%しかいない。4人に1人は逆に警戒水準だ」
日本人の36%が「警戒」水準
これは、アンケートを元に、退職までに用意できる資産額を推計し、老後に必要な資産額で割ってポイント化したもの。「退職準備スコア」と呼び、ポイントによって4段階に分類した。日本人全体で見ると、運用成績が過去を下回っても退職後の生活をカバーできる「計画通り」は30%。一方で、このままでは退職後の生活設計を大幅に見直す必要がある「警戒」は36%だった。
しかし、この客観的なデータに対し、主観評価はもっと甘い。計画通りだと思っている人の過半数が、実際はそうなっていない。また、客観的には「警戒」水準なのに、「計画通り」「あと一歩」だと思っている人は59%もいる。
背景には、2000万円問題があれだけ騒がれたにも関わらず、退職までに必要な資金を把握していない現状もある。「分からない」と答えた人は52%に上った。これは、同時に調査を行った英米ドイツ、香港と比較しても高い。野尻氏は、「分からない人の比率が高い日本と英国は、ほかの国に比べて公的年金のカバーが厚い。または厚かった。これが、どれくらい必要なのか自分で考える力を抑制しているのではないか」と分析した。
若い人ほどスコアが低いのに、「早くリタイアしたい」
特に厳しいのが20代の若年層だ。日本人全体では「警戒」水準は全体の36%だったが、20代では比率が53%まで高まる。年齢の高い層では、公的年金や確定給付年金などのサポートが見込まれる反面、若年層は見込み難いため、いっそうの自助努力が必要となる。しかし、収入から貯蓄に回す比率を示す貯蓄比率は7%と低く、しかもその運用方法は44%が銀行預金などの元本確保型だ。
一方で、退職希望年齢は、若年層が最も低く、63歳。「若い人ほど早くリタイアしたいと考えている。50代を見ると、所得が高いほど早くリタイアしようとしていて、これは分かる。しかし、若くなるにつれて、退職希望年齢が若くなっている。もう一つの課題だ」(野尻氏)
リンク:https://news.yahoo.co.jp/articles/af45644c7f5df09ccc76645cce33e2b959a7d512
[単語]
1.リタイア:
2.「老後2000万円問題」:発端は金融庁の報告書に収入を年金のみに頼る無職世帯のモデルケースでは、20~30年間の老後を生きるために約2,000万円の老後資金が必要になるとしているのです。総務省などが実施した調査によると、夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯における平均的な実収入は月額約21万円ですが、消費支出は26万4,000円ほどになるとみられています。毎月約5万円の赤字が出ることになります。30年間で、5万円×12カ月×30年=1,800万円の赤字が出る計算です。この赤字分は貯蓄から補填する必要があるだろう、というのが書かれた内容でした。
3.見据える(みすえる): 本質・真相などを見定める。
4.楽観的(らっかんてき):物事をうまくゆくものと考えて心配しないさま。
5.捉える(とらえる):物事の本質・内容などを理解して自分のものとする。把握する。
6.警鐘を鳴らす(けいしょうをならす):事態が悪しき方向へ向かおうとしている事を指摘する。 危機的状況を予告する。
7.甘く見る(あまくみる):物事をたいしたことがないと、軽く見なす。
8.自助努力(じじょどりょく):他を頼らず、自力を尽くして物事を成し遂げようとすること。