「都会育ちが田舎へ移住するのは難しい」は、本当か?
都会育ちの人が生活費の安い地方へ移住するケースは、以前より多くなっているのではないでしょうか。今やネットで手軽に買い物ができるだけではなく、必要な情報やビジネスもネット経由で得られる時代です。ネットがつながるPCがあれば、生活費の高い東京から出ていって、地方の広い家で安価に生きていくことは経済的合理性があるように思えます。
しかし、住み慣れた都会を離れて地方で広い一戸建てを借りるも、田舎の文化を受け入れられずに東京へ戻る人もいるのです。
都会育ちにとって辛い田舎の文化
田舎には、都会にない文化があります。その筆頭は「すぐ噂を立てられること」です。
筆者は会社経営者で時間の融通が利く立場です。移住して昼間のスーパーで子供を連れて買い物をしていたのですが、一日にして自分が東京から引っ越してきたことが噂になったようです(後から聞かされました)。東京では昼間からベビーカーを押してぶらつく男は珍しくもないですが、どうやら地方では少数派だったようで不審者のように思われてしまいました。
また、田舎には独自のコミュニティがあります。自治体のイベントなどの中には、ほぼ強制参加となっているものもあります。従業員の女性は「婦人会に行きたくない。いつも憂鬱」とこぼしていました。嫌なら行かなくて良いのでは? と思うのですが、「ここでは行かない選択肢はないの」というのです。その他、地域によっては草刈りや行事のお手伝いなどもあります。
こうした都会にはない田舎特有の文化は、移住者には面倒に感じるのでしょう。
ビジネスは田舎でも問題なし
筆者は移住前に「現地の人とうまくビジネスできるだろうか?」と心配していました。PC1台だけでビジネスをするプログラマーなどだと、現地で人と関わらなくてもオンラインの関係だけで完結できるでしょう。しかし、筆者が手掛けているビジネスはフルーツギフトのネット通販です。フルーツの仕入れ、梱包、電話対応などたくさんの従業員を雇用して、コミュニケーションを取りながら人海戦術で働いてもらわなければいけません。
しかし、蓋を開けてみて拍子抜けしました。ビジネスは田舎でもまったくの無問題です。「田舎は東京のようにIT化されていない」と思っていましたが、驚くほどITに強い人もいるのです。
また、田舎で企業経営をするメリットがあります。それは優秀な人を東京より安い人件費で採用できることです。「この人はどこへいっても十分通用するな」と感じさせる、すごく能力の高い社員もいます。優秀な人を雇うために、自分の会社は近隣の企業の賃金相場より高めに設定しています。しかし、それでも東京の企業と比べてしまうと、決して高額な報酬を出しているわけではありません。
それでも入社した社員やアルバイトは「この会社の給料の高さに惹かれた」と言う人もいて驚かされます。田舎は優秀な人材でも、東京ほど高額な人件費をかけずにビジネスができる魅力があるのです。
田舎移住者は、人の評判を気にする価値観を変えた方が生きやすくなると思います。「都会育ちにとって、田舎移住は簡単じゃない」というのは都会育ちの価値観を変えずに田舎に移住しようとしているからです。
噂されるのが当たり前の環境に身を置けば、いつの間にかそれに適応して気にならなくなるものです。結論としては「都会育ちが田舎移住をするのは、その人が自分の価値観を変えられるかどうか次第」だと思うのです。
リンク:https://news.yahoo.co.jp/articles/1cb41c12dee82cde74369e65a7904bfaedd751c0
[単語]
1.移住(いじゅう):他の土地に移り住むこと。
2.筆頭(ひっとう):最も主だったもの。
3.噂を立てる(うわさをたてる):世間があれこれと話題にすること。その場にいない人のことなどについてあれこれ話をすること。
4.融通が利く(ゆうずうがきく):その場その場で適切に対応できること、臨機応変にその場に相応しい処置ができること。
5.ぶらつく:あてもなく歩きまわる。
6.憂鬱(ゆううつ):気持ちがふさいで、晴れないこと。
7.草刈り(くさかり):草を刈ること。また、草を刈る人。
8.面倒(めんどう):手間がかかったり、解決が容易でなかったりして、わずらわしいこと。
9.人海戦術(じんかいせんじゅつ):多数の人員を次々に繰り出して、仕事を成し遂げようとするやり方。機械力などを利用せず、大勢の人を動員して物事に当たらせる方法。
10.拍子抜け(ひょうしぬけ):張り合いがなくなること。
11.報酬(ほうしゅう):労務または物の使用の対価として給付される金銭・物品など。